2012年4月1日日曜日

タックスヘイブンの闇

「タックスヘイブンの闇 ~世界の富は盗まれている!」ニコラス・シャクソン著 藤井清美訳 朝日新聞出版

久しぶりにハードカバーの本を読んだが、大変面白かった。タックスヘイブンである、ケイマン諸島やジャージーでの政治や、そこで生きる人々へのインタビューも交え、具体的なエピソードや歴史を積み重ねて、わかりやすい構成となっている。

 昨今のオリンパスやAIJ投資顧問が利用したことで、ケイマン諸島などのタックス・ヘイブンに注目が集まっているが、私個人はなんとなく胡散臭い存在、と言う程度の認識しか無かった。パナマ船籍などと同じような程度の存在だと思っていたのだが、もっと恐ろしい犯罪の温床であり、新しい植民地運営であることが本書を読んでわかったのだ。 節税というのは法律の範囲内であるのだが、国際金融が絡むと法律そのものをねじ曲げ、富裕層の税金を貧困層に押しつける手段と変わる。それを合法化するのがタックス・ヘイブンである。これは犯罪を闇に隠すもので有り、本来得られる税収が奪われていると言うことである。各国の財政破綻から国際金融危機を引き起こす元凶で有り、国家システムを歪める病魔なのである。自由の美名の元に暴力をふるっている存在をどの様に規制するのか。政治家の倫理と徳が試されるのだと思う。

 日本の詐欺的経済事件はほんの氷山の一角で有り、世界経済そのものと同じ金額の金が闇の中を蠢いているというのは、尋常なことでは無い。それがシティの、いわゆるムラ社会のルールで動いているというのは何という時代錯誤なのだろう。大手会計事務所や金融機関でなぜ不祥事が無くならないのか。金というのは触る人間を狂わせ、倫理を失わせる魔力がある。性善説ではどうにもならないのだ。金で倫理観が狂うのは貧乏人の犯罪者だけではない。富裕な人間も狂うのだ。金持ちが人格的に偉いわけでは無い。シティの紳士たちが高い倫理を持ち合わせていないことがそれを証明している。

 また本書を読んでリバタリアンに対する見方が変わった。「伽藍とバザール」で知られるエリック・レイモンドを知って、リバタリアンとか反連邦政府主義や全米ライフル協会の事を知ったのだが、ここに繋がってくるとは。共和党の大統領予備選に出ているロン・ポールもリバタリアンで有り、アメリカ人の中で一定の支持が有り共感を得ているという事実がある。しかし規制の無い世界というのは非常な弱肉強食の世界で、暴力的な世界なのだ。それが先鋭的に現れているのがオフショアシステムであると言うことも本書でわかった。一読を勧める。

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